七つの大罪 – 傲慢

 
小太りの男がしきりに謙遜しながら部屋を出て行って、ジョルノは深い溜息をついた。
「これでやっと午前の分は終わりですね。手早く朝食をとって、午後の準備をしなければ」
「今日も大忙しだな」
部屋の隅、顔が映るほどピカピカに磨かれたデスクの上に鎮座していた亀から、うっすら透けている男の上半身が現れた。
「まあ、分かっていたことですしね」
「わたしも裏方なら手伝えるが、対面の仕事はきみがやるしかないからな」
ジョルノはポルナレフに向かって肩をすくめてみせた。
「大丈夫ですよ、今は死ぬほど忙しいですが、ひと通りの面通しが終わったらほんの少しは楽になるでしょう。先程も言いましたが、この程度は覚悟のうちにも入りませんよ」
「言うねえ」
ポルナレフの苦笑に、ジョルノは目を細めた。
「僕はやりたいことをするために、この組織を乗っ取ったんです。目的のためならば、雑務だろうが命の奪い合いだろうが完璧にこなしますよ」
ポルナレフがそれに何か返す前に、部屋にノックの音が響いた。
「俺だ、入るぜ」
「どうぞ」
この部屋に入るのに名乗る必要のない人物は、ただ一人だけである。
大量の書類を持って苦々しい顔でやってきたミスタをちらりと見て、ジョルノはまたポルナレフに向き合った。
「ミスタだってそうですよ。『4に関係のある事象はすべて悪くなる』は裏を返せば『4に関係なければすべて成功させられる』という意味ですから」
「ん?何の話か知らねえが、今日は9月5日、晴天、俺は絶好調だぜ」
「ええ、頼りにしてますよ」
そうして仕事の話に戻る――ピッツァの話題も聞こえてはきたが――二人を見て、ポルナレフはふと、揺るがぬ自信でもって正義を為した、古い友人のことを思った。

 
 

誇るよろこび