七つの大罪 – 嫉妬

 
東方仗助は鏡を覗きこんで、自分の頭を様々なアングルからチェックした。
よし、今日もバッチリだ。
最後にもう一度リーゼントを撫で付けて、彼は鞄を手にとった。
億泰と待ち合わせ、どうでもいいことをダベりながら学校へ向かう。
前は同じ学校の女子がちょくちょく声をかけてきたものだが、友人と登校するようになってからはそういうことはほとんどない。
仗助はそれでいいと思っていた。
年頃の男子としては、女の子にはもちろん大いに興味関心があるが、誰か一人と付き合って学内やら放課後やら拘束されるのは、今はちょっと勘弁願いたい。
それよりは、億泰とバカ話をして大声で笑い合っているほうが楽しいというものだ。
別に、恋愛を悪いというつもりはないんだがな、と、幸せそうにしている康一を見て思うのだが。
そーいえば、と仗助は考えた。
あの承太郎さんにも、高校生の頃があったんだよなあ。
男の自分から見ても惚れ惚れするほど男前なのだから、学生時代もさぞやモテたことだろう。
自分たちの改造制服を見ながら、
「わたしも昔はヤンチャしたものだが」
と彼は言っていた。
「わたしの時代は、制服の裾を短くするのではなく、長くするのが流行りでな。まあ…シルエットは今着ているコートと似たり寄ったりなのだが」
今より若い承太郎さんが、長ランを着込んで歩いていたら、と想像する。
確かに女にはモテるだろうが、ちょっと近寄りがたいだろう…それは何も、悪い意味ではなくて。
歩きすぎていく途中の店の、磨かれたショーウィンドウに自分の姿が映ったので、手早く頭を動かして確認をした。
「別に崩れてなんかないぜ~ッ」
と隣から声が上がる。
そりゃあもちろん、崩すわけはない。
崩すわけはないが、だが、少しでも承太郎さんや、そして”あの人”のように、『カッコよく』なりたいと思っているわけである。

 
 

たゆまぬよろこび