七つの大罪 – 怠惰

 
ジョセフ・ジョースターの義手の試作品が、三度目の調整を終えたという報告を聞いて、彼はベッドから起き上がった。
とたん「あイテテテ」とうずくまる。
「まーJOJO、大丈夫?」
そう言って屈みこんでくるスージーQを制して手を振る。
「大丈夫だぜ、昨日よりだいぶ楽になった。もう自分で起き上がれるぜ~」
「だったらいいけど、無理はしちゃだめよン!波紋で痛みを和らげるとか言って、むちゃくちゃやろうとするんだから!」
「しねえって、もう柱の男もいなくなって修行も終わったんだし、俺はしばらくダラけることに決めてるんだぜ!」
そこでスージーQはジョセフに手を貸し、二人で実験室に赴いた。
白衣を着た若い研究者が、ヒュウっと口笛を吹く。
「あいかわらずお熱いですねェ」
「だろ~?この前結婚したから、正式に夫婦だぜ~ッ」
「JOJO!イチャイチャしとらんと、早く義手のテストをせんか!」
「はーいシュトロハイム様ー」
「はぁーい」
「お前らはふざけに来とるのか!」
「違いますーサボりに来てるんですー」
ジョセフはあくまでおちゃらけた様子でそう言ったが、対するドイツの軍人は、ふっと真面目な顔になった。
「そうだな、お前は…ここのところ気が休まる時間なぞなかっただろう。せめてここではゆっくりしていけ。多分もう少ししたら…。……もう少ししたら、体も治って義手も完成して、祖国に戻れるだろうからな」
もう少ししたら、言いかけたその続きを、彼は口に出さなかった。
もう少ししたら、イギリスからもアメリカからも、ドイツに来ることはできなくなるだろう、とは。
そこでジョセフも、
「ああ、お言葉に甘えさせてもらうぜ」
とだけ言って、義手のテストに入った。
一体この先の人生に、またあれほど大きな戦いがあるのか、それとももうないのかは知らないが、少なくとも今は、柔らかい枕に埋もれて幸せな夢を見よう。

 
 

まどろむよろこび