七つの大罪 – 色欲

 
うららかな午後、陽は暖かく、小鳥はさえずり、愛犬はすぐ横に伏せて静かな寝息を立てている。
春の日の庭は、この上なく幸せな時間が流れる天国だ。
ジョナサンはため息をついて、読んでいた本を閉じた。
隣に座っていたエリナが、バスケットからお茶とお菓子を取り出して並べている。
茶葉は、先日スピードワゴンが贈ってくれたものだ。
東洋からきたものだとかで、不思議な風味だがなかなか美味しい。
ティーカップにお茶を注ぎ、エリナが「ジョージ!」と声をかけると、庭にしゃがんで何やら一心不乱に穴を掘っていた少年が、弾かれたように顔を上げて走ってきた。
あどけない顔をすっかり高揚させているのは、何よりもいとおしい自慢の息子だ。
「母さん、これ、見てください!」
「まあ、かわいらしいお花ね。根っこまで全部抜いたの?」
「はい、小さな花なのにこんなに根っこが長くて、掘り出すのが大変でした!」
エリナは微笑みながら、ハンカチでジョージの頬の泥をぬぐった。
「さあ、手を洗っておいでなさいな。おやつにしましょう」
「はい!」
元気よく返事をして駆けていく背中を見ながら、ジョナサンはとても満たされた気持ちで目を閉じた。
 

轟音と、それから火の粉がはぜるパチパチという音。
ジョナサンは意識が薄れていくのを感じながら、奇妙なほどの幸福を感じていた。
人生の最期には、今までの体験が早馬のようによみがえるというが、今のは何だったのだろう?
あるいは得ていたかもしれない未来というものだろうか。
そうだとしたら、神よ、どうかあの夢の続きを用意し給え!
きっと、きっと、息子が家の中へ入って行くと、鼻を鳴らして彼が出迎えるのだ。
自宅の庭でピクニックなどくだらない、などと言って。
すると息子が笑って、おじさんの分のお茶もあるから、と手を取り、そうして一緒に庭に出てくるのだ。
そうして、そうやって、皆で……幸せな時を過ごすことだってできるだろう。
そんなことを取り留めもなく考えながら、ジョナサンは胸にいだいた無二の友人の首を、ぎゅうと抱きしめた。

 
 

愛するよろこび