花京院の出てるゲームの実況動画がUPされた話2

■ジョジョとは
幅広いジャンルの実況プレイを投稿しているゲーム実況者。
声優、花京院典明の大ファン。
幅広いと書かれているが、実際は花京院典明が声を当てているゲームしかプレイしない。
逆に花京院典明が出ていれば、RPG、恋愛ゲーム、アクションゲーム、ソーシャルゲームまでカバーする。
プレイスタイルは普段は堅実、慎重といったタイプだが、ここぞというときには大胆な一面も見せ、ゲームセンスはかなりのもの。
実況プレイ動画をUPするまでほとんどゲームというものをしてこなかったらしく、初めてのジャンルのゲームをプレイするときは初心者丸出しだが、あっという間に上達するので、それを楽しみにしている視聴者も多い。
コメント返信はあまりせず、マイペースにゲームを楽しんでいる。
キャラクターをキャラ名ではなく「花京院くん」と呼ぶことが多い。

■プロフィール

男性。
20代。
背が高いらしい。
単発ゲームの動画にてバイセクシャルであることを明かしている(現在は男性と交際している)。

E子はスマホから顔を上げた。

待ち合わせのカフェに友人が入ってきたからだ。
「E子、どしたの?なんか機嫌良さそうだけど」
「好きな実況者が新しい動画上げてたの」
「そっかー、あたしはあんまり実況見ないからなあ。動画サイトは歌メインだわ」
「この人お勧めだよー!めっちゃイケボでゲームもうまいし」
「名前なんていうの?」
「ジョジョっていうんだけど」
友人は目を見開いた。
分かる、とE子は思った。
自分だって、最初見つけた時は驚いたものだ。
「イケボのジョジョって……」
「あたしも一瞬びびったんだけどさ。明らかに別人だよ。だって『あの』JOJOがゲーム実況なんてやる?」
「それもそうか……」
E子はお冷で口を潤し、ウエイターにアイスコーヒーを頼んだ。
友人とE子は、同じ高校の頃からの付き合いだ。
その高校には、一人有名人がいた。
名前はJOJO。
いやそれはニックネームなのだが、みんなJOJOと呼んでいた。
彼はとてもカッコよくて、すごくカッコよくて、とにかくカッコよかった。
学校中の女子が彼に夢中になっていたといっても過言ではない。
だが彼は、ゲームというものに興味がなかったはずだ。
不良ではあったがゲームセンターでは見たことがないとクラスの他の不良が言っていたし、男子たちが新作ゲームの話題で盛り上がっていても、我関せずといった顔をしていた。
「それにさ、声優ヲタだし。花京院典明のファン」
「あ、それは別人だわ」
「でしょ」
E子はスマホを仕舞い、友人との会話に花を咲かせた。

「おお、エンディングだな。なかなか面白いゲームだった。次は格闘ゲームに挑戦する予定だ」

 花京院ルートしかやってねえwwww
  いつもどおりだろw
    ブレねえwwww
格ゲーは初めてか?
  花京院出る格ゲーつったらAoHか
   でも発売まだだよな?

「実は仕事が忙しくなる」

そうなんだ
  何してるのー?
 ニートじゃなかったか
  インテリっぽいしニートじゃねえだろ
「3ヶ月ほどインターネットのない環境に行くので、動画を作ることができない」
 えええええええええええ
3ヶ月wwww
 ちょwwww
  マジでー
どこいくのwwww
  秘境かwwwwww

「それでは消すぞ」

あっさりwww
 重大発表したあとなのにこの淡白さwwww
  そこがすきww
 乙
   おつーーー
  乙

3ヶ月。

E子は絶望に固まった。
3ヶ月もこの美声が聞けないのか。
ジョジョはあまり頻繁に動画をUPしない。
UPするタイミングもまちまちだ。
E子はジョジョ以外にも実況プレイを見ているが、彼が一番のお気に入りなのだ。
彼女は涙をのんで3ヶ月を耐えることに決めた。

そしてその3ヶ月後、ジョジョの動画は、荒れた。

花京院が声を当てるキャラクターが出る予定だった格闘ゲームの発売日が、延期になったのだ。
代わりに彼が選んだのは、BLゲームだったのである。
男がBLゲームをプレイするということで、ジョジョのファンもアンチも、ゲームのファンもアンチも、そのどれでもないお祭り好きも、不快ともいえるコメントを書き込みまくった。
10コメントに1コメントはジョジョがバイだというものが入り、それに対する差別的なコメントすらあった。
E子も「男がBLゲーやったっていいだろ。馬鹿にするためにプレイするんじゃないんだから」と書き込んだところ、「長文キモい」というコメントがついた。
がんがんに荒れた最初の動画から3日後、次の動画がUPされた。
ジョジョの第一声は、
「さて、サイトの紹介によると、あと二人登場人物が出てくるらしい。花京院くんはその片方だ。楽しみだ」
というものだった。
E子はとりあえず、「普段通りwwwwww」と打ち込んだ。
「前の動画のコメント読めよ」といった文章が流れたあたりで、「ところで」とジョジョが口にした。
「どうやら私がこのゲームをプレイすることに意見のあるものが多いらしい。対応するにも、過去の動画のコメントを拾うのには限界がある。そこで相談したのだが、今度の土曜の夜に生放送というものをしてみることにした」
生放送!!!
ジョジョの生放送!!
3ヶ月待たされた挙句に前回の動画でテンションの下がっていたE子は飛び上がった。
ジョジョと話せる(コメントだけど)!!
「このゲームは全て動画にしたいので、生放送中にやることを募るといいと言われた。よかったらコメントしてくれ」
誰に相談したんだ、というコメントもあったが、ほとんどは生放送のリクエストで画面が埋まった。
一番多かったのは「顔出し」だ。
E子もジョジョの顔は見てみたいと思っているが、声だけで実況プレイをしている主に失礼なのではと思い、「歌ってみた」と書き込んだ。
この美声で歌ってもらえたら、耳が幸せになるに違いない。
そうして、土曜の夜がやってきた。