きっと鉄の色(R-18)

軽率な軍パロでエロですが当然ながら実在する何にも関係がありません。

 
 
 

花京院典明は上機嫌だった。
戦況はたいへんよろしく、昇進も間違いないし、兵士たちの士気も高く、明日には更に物資が届く予定だ。
それに。
花京院は鼻歌交じりで独房の錠を開けた。
薄暗いそこにうずくまっているのは、先日捉えた一人の捕虜だ。
交戦していた一個隊のトップだった男で、お前の首さえ差し出せば他の兵士たちは助けてやるという言葉で身柄を拘束したのだ。
その男は有能な指揮官で、自身も一騎当千の戦士であり、その上ちょっと見かけないくらいの美丈夫だった。
敵軍にこちらと同じだけの兵士と物資があったなら、勝てたかどうかは疑わしい。
花京院は鞭を手に取り、ごく優しげな声を出した。
「さァ空条くん、次の作戦について、僕に教えてくれる気になったかい?」
「……知らねェと言ってる」
返ってきたのは地を這うような低い声だった。
効くものを萎縮させるその声に、けれど花京院は楽しげに、「ン~」と歌うように応えた。
「君も本当に頑固だなあ。君の立場で知らないはずがないだろう」
そうしてとても気軽な様子で鞭を振るう。
鋭い音が響いて、空条と呼ばれた男の筋肉質の体に、もういくつめか分からない赤い線が加わった。
空条は歯を食いしばり、ほんの小さな叫びさえ上げなかった。
「そろそろ音を上げても、誰も君を責めないと思うけどねえ」
そう言うと花京院は、何の予備動作もなくいきなり空条の男性器を軍靴で踏みつけた。
「ぐッ…う…」
「ああ、まったく。君はとんだ変態だね?」
冷ややかに花京院が見つめるそれは、確かにしっかり形を兆していた。
花京院は笑みを深くしながら空条の前に座り込んだ。
その肩を強く押せば、憔悴して力の入らない空条の体は、あっけなく冷たい床に倒れた。
花京院はニヤニヤ笑うのを隠そうともしないで、下を脱いで空条に跨った。
自分の部屋で念入りに解してきたそこは、空条のぬめる血の助けもあって、さしたる抵抗もなくそれを飲み込んだ。
押し倒した空条が何やら言葉にならぬうめき声を上げているのを無視して、好きなように腰を動かし快楽を求める。
空条のそれは、疲労からかすぐにはぜて、少しの熱を花京院の中に吐き出した。
「ちょっと、もう、早いよ。そんなんじゃ女の子にモテないぞ」
言ってから、自分の発言が面白かったのか、花京院はくすくす笑った。
「君は祖国じゃずいぶん女性にモテていたんだろうな。こんなことしてるって知ったら、君のファンたちは卒倒してしまうんじゃあないか?」
「……お前こそ、この国じゃ、男色はご法度だって聞いたがな。死刑にされる場合もあると」
「やだなァ、これは男色じゃあないよ」
花京院はゆるゆると腰を動かした。
だが空条のものはわずかな反応しか返さない。
花京院は口を尖らせて、放っておいた自分の前の方に手を伸ばした。
「これは君から情報を聞き出すための拷問…おっと、詰問の一環だよ。君の国だって、男色は処罰対象だろう?こんなこと、気持ち悪くて耐えられないんじゃあないか?」
「ああ、反吐が出る。下手に痛いよりたちが悪い」
「そんなこと言ってるけど、君、」
花京院は空条の胸に手をすべらせると、赤く裂けた傷の、まだ血も乾いていないようなところに、思い切り爪を立てた。
「ぐぅ…ッ」
空条の声が暗い独房――という名の、声など外には漏れないようになっている拷問部屋――に響き、そして、花京院の中に埋まっていたものが少しだけ硬さを取り戻した。
「君、すっかり痛みと快感が関連付けられてしまっているじゃあないか。こんな体で国に帰れるのかい?」
そうは言ったものの、花京院にはこの男を五体満足で帰してやる気なんて、さらさらなかった。
こんないいものを手に入れたというのに、何故手放さなければならないのか?
この戦争が終わったって、と花京院は考えた。
この戦が集結したって、この男を逃がすつもりなど毛頭ない。
地下室がいいな、誰にも邪魔されない、光の届かない場所。
朝夕に水と食料を持っていってやって、世話を焼いて、僕に依存させて、そうして……
そうしてそうして戦は終わった。
戦況は何度もひっくり返り、首を並べることになったのは、花京院の側の人間たちだった。
一個隊の指揮官だった花京院も戦犯として、二度と出られないところにぶち込まれることになった。
と、そこへ、敵国の中でも特に発言力の強い一族の一人から声がかかった。
花京院は、彼の元でこれからの一生を過ごさなければならない、と。
そう聞いて花京院の頭に浮かんだのは、たった一人だった。
果たして、手錠をかけられて兵士に囲まれた花京院を迎えたのは、空条その人だった。
空条は花京院を引き渡されると、美しい顔を歪めて笑い、
「立場が逆転しちまったな?」
と言った。
こんな時だというのに、その表情があまりにも壮絶で美しいものだから、花京院の心臓は早鐘のように鳴った――もっともこれは、プライドを軍靴で踏みにじられた空条に、どれほどの報復をされるのか、という恐怖からくる現象であろうが。
空条は機嫌よく花京院の手錠の鎖を引いて、家の中を歩き出した。
鼻歌でも歌い出しそうな楽しげな様子だ。
それはちょうど、花京院が空条の独房へ向かうときにそっくりだった。
ついた先は寝室だった。
シンプルだが大きなベッドと、小さめの机と椅子、それからクローゼットが目に入る。
空条は花京院の手錠の鎖に別の長い鎖を通し、ベッドの柱に結びつけた。
花京院がいよいよかと身を固くした、というのに、空条はそのまま部屋から出て行ってしまった。
花京院はぽかんとして首を傾げた。
夜まで放置だろうか。
その可能性は大いに考えられるな。
ところが空条は、30分もしないうちに戻ってきた。
その手には金属のトレイが乗っており、その上は焼き目の付いたホットサンドと、何やら食欲をくすぐる匂いのスープが湯気を立てている。
花京院は腹が鳴るのを止められなかった。
ここ数日、まともなものを食べていない。
しかし花京院は、首を振って自分の中から期待を追い出した。
スープ皿はひとつしかないし、サンドだって明らかに少ない。
ろくにものを食べていない囚人の前で食事を取りワインを飲む、ありきたりの拷問だ。
ところが空条はベッドの横に座った花京院の目の前にそのトレイを置いた。
戸惑う花京院の目が捉えたのは、奇妙なほど熱く光っている空条の緑色の瞳だった。
「これは…?」
「腹、減ってんだろ?」
「でも、これは……君の食事では?」
「俺はもう済ませた」
どういうことか分からないまま、それでも空腹には耐え切れず、花京院は目の前に手を伸ばした。
もしかしたら毒か何かともちらりと思ったが特に変わった味はせず、どころかとてもうまい。
小さなキャベツがぽつりと浮いているだけの、ほとんど水のようなスープばかり飲んでいた胃に、まるで染みわたるようだ。
「あんまりがっつくなよ。ここんところしっかり食べてねんだろ、いきなり入れたら腹を壊すぜ」
「えっ…あ、うん…ありがとう」
花京院が出されたものをきれいに片付けると、承太郎はトレイと一緒に持ってきたベルを置いて立ち上がった。
「さて、俺は仕事に戻るぜ。戦争が終わっても机の前でやらなきゃならねえことが山のようにあるからな。便所に行きたくなったらこれで呼べ」
「え、ああ、…分かった」
やっぱりよく分からない顔をする花京院を残して、承太郎は寝室から出て行った。
花京院はこの状況がどういうことか考えた。
そうか、空条は僕を生かさず殺さず、ゆっくりじっくり仕返しをするつもりなのだ。
いったい夜には、何をされるのだろう?
しかしてその夜、よりはちょっと前の時刻に、空条はまた湯気の立つ皿を載せたトレイを持ってやってきた。
夕食は、野菜とベーコンがごろりと入ったシチューに、柔らかいパンまでついていた。
花京院がやっぱり首を傾げながら、それでもペロリと平らげて、トイレに行きたいというと、空条は鍵を取り出してベッドの柱の鎖を外し、花京院の手首を握って屋敷の中を歩いた。
トイレの扉には、外側から鍵をかけられるような真新しい錠が下がっていた。
花京院が手錠をかけられた両手で四苦八苦しながら用を足し終えると、空条はやっぱり楽しげに彼を寝室へ連れ帰った。
それからまた仕事にでも戻るのかと思いきや、空条は何冊かの本を持ってきて、寝室の椅子に座って読み始めた。
ちらりと表紙を伺うと、それは海や船について書かれた本であるらしかった。
この男はそんな本を読むのか。
と、花京院が自分を見てるのに気付いたらしい空条が顔を上げた。
「お前も何か読むか?」
「えっ?」
「ここに一人でいると暇だろう」
「いや、まあ…確かにそうだが」
「明日何か持ってきてやる」
そう言って片手でパタンと本を閉じた空条の、その目がギラギラ光っていて、花京院は彼の読書の時間が終わったことを知った。
手首を引っ張られてベッドの上にあげられる。
ガチガチに固まっている花京院の表情を楽しむように、空条はいやにゆっくり服を脱がせていった。
首筋に唇を落とされて、ビクリと体が跳ねる。
その反応に気を良くしたのか、空条は花京院の体を、まるで大事なものを触っているかのような手つきで愛撫した。
花京院は唇を噛んだ――こんなことで簡単に持ち上げられてはいけない。
この男は僕が心を許すまで甘やかしてくるに違いない。
そしてすっかり彼になついたら、そこで初めて手のひらを返して突き落とすのだ。
だから花京院はその晩、空条が時間をかけて自分の体を開き、細い体を気遣うようにゆっくり優しく抱いたことから目をそらして、ベッドから伸びる冷たい鎖を握りしめていた。

 

次の日花京院は、ふかふかと柔らかいベッドの上で目を覚ました。
憎い相手を縛っておくには不似合いな場所ではないかと思ったが、ここの主が自身への負担を軽くするためだと気付いて息を吐いた。
独房で彼をいじめていた時は、自分の方も体が痛んだものだ。
花京院がサイドボードの水差しから水を飲んでいると、寝室の扉が開いて空条が姿を現した。
兵士との面会があった昨日に比べて、随分とラフな格好をしている。
首元の空いたシャツを見て胸が一つ打ったのは、きっと驚いたからに違いない。
「ちょうど起こしに行こうと思ってたぜ。朝食だ」
トレイの上の朝食は、卵を乗せたトーストにサラダ、牛乳までついている。
目を見開いた花京院に、空条は
「牛乳は今朝届いたものだ。悪くなってるものじゃねえから安心しろ」
と請け合った。
花京院はそんな空条とは目を合わせないようにしながら、もくもくとそれらを腹に収めた。
空条は一度姿を消すと、次は両手にたくさんの本を抱えて戻ってきた。
「とりあえず、うちにあるのをいくつか持ってきたぜ。俺のも親のもあるから、どれかは気に入るだろ」
そう言ってベッドの横に置かれた本は、昨日空条が読んでいたような海洋学に関するものから、詩集、冒険小説、ロマンス、医学書、面白いところではレシピブックなど様々だった。
昼の間花京院は、ベッドに腰掛けてそれらを読みふけりながら、これってもしかして平和な幸せというやつじゃないか、と思いかけて首を振った。
何を考えているんだ、僕は。
これは空条の策略だ。
こんなのに乗せられてほだされてみろ、次の日には僕は路上生活だ。
……ただ、空条が裏の読めない男であるのは、この本には関係がない。
このような本を読むのは初めてだが、魚の生態に関する本というのも、なかなか興味深い。
ところどころに線が引いてあって書き込みがあるのが、空条の人となりを感じさせ…そっちはいらないんだ別に。
花京院が自分でも驚くほど熱心に本を読んでいると、いつの間にか昼になっていたようで、パスタを乗せたトレイを手に空条が部屋に入ってきた。
花京院が手にしている本を見て、ふっと笑う。
「そいつが気に入ったのか?」
「僕は、別に…」
「他にも貝とかヒトデとか、インドあたりの海の魚の本もあるぜ。持ってきてやろうか?」
「え、ヒトデ?ヒトデって、あの?」
「そうだぜ。あれはあれで、最近研究が進んで、色々と新しい発見がされてるんだ」
「へえ、知らなかった」
身を乗り出した花京院は、しかし、手錠の鎖がちゃらりと鳴る音で我に返った。
「……僕は、別に。ただ暇つぶしに読んでいるだけだ」
「…そうかよ」
そうして空条は部屋を出ていき、何冊かの本を持ってきたが、その時にはもう何も言わないですぐに仕事に戻ってしまったのだった。
その晩も夕食後に空条は花京院をベッドに上げ、恋人にするような手つきで全身に触れた。
そのまま手が滑ってゆき、熱を持ち始めている花京院のそれを握りこむ。
無理に力を入れるだとか爪を立てるだとかそういうことはせずに、やわやわと刺激を与えている。
「ッ……空条、君は、どうして…」
「ジョウタロウだ」
「え?」
「俺の名前だ。承太郎、そっちで呼べ」
空条、もとい承太郎がそう強要する理由はまったく分からなかったが、今の自分は彼の慰み者であるので、花京院は素直に「承太郎」と呼んだ。
「承太郎、君はどうして、そんなふうに……君が僕を引き取ったのは、復讐のためだろう?どうしてこんな……僕に優しくするんだ?」
「花京院、下の名前はノリアキだったか」
「ああ……うん。でも、その、もし君がよければ、僕のことは苗字のまま呼んでくれると嬉しい」
「じゃあ花京院。俺は俺のやりたいようにやってるだけだぜ。お前が、」
承太郎はニヤリと笑った。
ベッドの上で頬を上気させながらのその表情は、これ以上ないほど色っぽく、花京院は背中を悪寒に似たものが駆け上がるのを感じた。
「お前が、俺のところまで落ちてくればいいと思ってな」
「君の…ところまで、っていうのは」
「てめーが俺なしじゃ生きられなくなるまでって意味だ」
「僕の生死は…君が握っているだろう。僕は今、君に生かされている」
「そういう意味じゃあねえ」
言うと、承太郎は少々油断していた花京院の足の間、奥まったところに指をすべらせた。
「っあ、んん…!」
ぐちぐちを音を立ててそこが解されていくうちに、花京院のそれが兆し始め、腰がゆらゆらと揺れる。
「やれやれ、こんなところに指入れられてそんな風になってるなんざ、てめーの祖国のやつらが見たら発狂もんだろうな」
いつか花京院に言われた台詞を思い出しながら声をかけるが、身を捩らせて熱を逃がそうとしている花京院に聞こえているのか疑わしい。
「も、いいから空条、早くッ…」
「俺のことは下の名前で呼べと言ったはずだぜ」
「あ、ぃ、入れて、…承太郎、」
「ッてめェ!」
承太郎が指を引き抜いて自分のものを宛がうと、そこは誘うような動きを見せた。
一気に奥まで貫く。
花京院の細い体が痙攣するように跳ねた。
「っあ、ああ――……」
「動くぜ」
「ぅ、や、あ、ン、ど、して、じょう、たろ、」
「どうして、か、分かんねー、のかッ!」
承太郎は花京院の顎を掴むと、薄く開いた唇に己のそれをぶつけた。
その中で赤くひらめくものを絡めとる。
舌を噛まれないようにと右手で顎を固定したのだが、花京院にはそんな考えすら浮かばないようだった。
快楽を追って、自分からも承太郎の舌を求めて絡ませてくる。
時折強く吸い上げてやれば、彼の中もきゅうと狭まって承太郎を追い上げた。
「てっめえ、そんな、体ばっかり俺に馴染みやがって…、俺はてめーのこと、体以外も全部欲しいんだよッ」
「そ、んな、いみわかんな、っあ、あ、ぁ」
「俺はっ、てめーに、惚れてる、つってんだよ!」
ほとんど叫ぶように、承太郎がそう吠えると、花京院は目を大きく見開いた。
零れ落ちてしまいそうだ。
けれど承太郎がガツガツ激しく腰を使うと、もうそれに返す言葉は全て嬌声に変わってしまって、全てが闇の中に飲み込まれていってしまった。

 
 

翌朝だるい体を起こした花京院の元へ、いつものように承太郎が朝直のトレイを持ってやってきた。
今朝はトーストの横にバターとマーマレードが添えてあり、牛乳とりんごが一緒に乗っている。
花京院もいつものように、ベッドから下りて、床の上でそれを食べようとした。
ところが承太郎は、ベッドからは少々遠いテーブルの上にそれを置いた。
「空条…いや承太郎、か。悪いけれどそこは届かないよ」
「分かってる」
承太郎は鍵を2つ取り出すと、ベッドの柱の錠を解除した。
そして2つ目の鍵で、花京院の両手を解放した。
ぽかんと見上げてくる花京院に、ひとつだけふっと笑いかけ、そのまま窓の外を見やってしまう。。
「これで食えるだろう?」
「え?でも、君……?」
「お前はもう俺の捕虜じゃあねえ。どこへ行こうと自由だ。俺の気持ちはもう、昨日伝えたからな」
そう言われても花京院はまだ動けないでいた。
擦れて赤くなっている自分の手首を見下ろす。
「君は、僕を……手放すって?どこへでも行けと?」
「ああ、好きにしろ」
「そんな……そんなの」
花京院の声が震えているのに気が付いて、承太郎は弾かれたように顔を上げた。
「そんなの、ひどいじゃあないか。これが外されてしまったら、鎖も手錠もないのなら、僕はどうやって君のそばにいればいいんだ?復讐以外の理由でどうやって君に抱かれるっていうんだ?」
「……花京院」
「嫌だ、僕を放り出さないでくれ。こんなに優しくされなくていいんだ。馬小屋にでも繋いでおいてくれたら…食事だって何も贅沢はいらない、だからどうか…」
「花京院、お前、俺のそばにいたいって?そう言ってくれるのか?」
「ああ、そんなこと、言えるわけがないだろう!僕と君は敵同士で、しかも僕は、君に好き勝手したのだから!」
「ああ、その通りだ。てめーにあんなことをされたせいで、俺はひどいことになっちまった。だからてめーは、その責任を取る必要がある」
「責任?」
「そうだ。たとえ鎖を外されたって、どこにも行かないと約束して、ずっと俺の隣にいなけりゃならねえ」
「…本当に?これを外されても、僕は君のそばにいてもいいのか…?」
「それが自由にしてやる条件だからな」
「それじゃあ…仕方がないな」
「ああ、仕方ねえな」
そう言ってやると、やっと花京院は目尻を下げてへにゃりと笑い、「よかった」と言った。
安心したのか、彼の腹の虫がくぅと訴えたので、花京院は照れくさそうな顔で立ち上がった。
承太郎は彼にローブを渡してやり、昼食は食堂で一緒に取ろうと考えた。

 
 
 
 
 

 

「そういえば実は、僕の下の名前、テンメイって言うんだが」
「そうだったのか!?書類にはふりがなまで書いてなかったからな」
「でも君には苗字で呼んで欲しいかな…」
「そうなのか?」
「うん、あの、あー、その…君と初めて会った時…」
「あー…キレーな名前してるなって挑発したな……」