ある工学者の報告書 – 7枚目

 
ロボット工学の分野で、世界に無双の研究所がある。
ロバート・E・O・スピードワゴンの創立した、その名もスピードワゴン研究所である。
研究所からは工場作業から対人オペレーターまで、様々な業務に携わるロボットが輩出されているが、もっとも特徴的なのは人に近い外見をしたロボットたちであろう。
特に国家事業に関わる仕事さえ与えられている、J-シリーズを知らない工学者は居ない。
ただしこのシリーズ、その内の2体は公共利用はされず、研究所内に常在しているのだ。
1体はJ-001、行動が制限されているため、普段は中庭などで小鳥と戯れている。
そしてもう1体はJ-003、いや正式にはJ-003=K-001である。
J-003承太郎のボディにK-001花京院の電子頭脳を移し、同期を取らせて一個体として稼動している。
花京院には制御すべきボディが無いため不安定であり、承太郎には負荷が大きく処理能力が落ちている。
けれど二人とも、一度も不整合を起こしたことは無い。
確かに承太郎のスループットは激減し、特にレスポンスにその遅延が顕著であるが、「彼は返答が遅い」あるいは「ゆっくりである」と事前に分かっていれば、気に障るほどではない。
ロボット工学とは全く関係の無い友人、ポルナレフなどは分かっているくせに「トロいなお前!」などと言っては元警官仲間のアヴドゥルに諌められているが。
けれど処理能力が低下したとはいえ、通常のコンピュータの何百倍もの性能を誇る承太郎である。
アイディアマシンとしての花京院を積んだ彼は、その提案能力と処理能力でもってJ-シリーズだけ、あるいはK-シリーズだけでは達成できない次元に到達した。
つまり、一流のロボット工学者から、意見を求められる立場に居るのだ。

 

ところで、現在J-005まで実装されているJ-シリーズも、次の個体の開発準備が始められるとのこと。
J-006はシリーズ初の女性型となる予定である。
彼女の開発プロジェクトのメンバーには、新規に2人が加わることになっている。
1人はジャイロ・ツェペリ、名高いツェペリの本家の嫡子だ。
そしてもう1人はJ-003=K-001――つまりこの私――である。
J-006はJ-003の妹であると共に、J-003=K-001の娘でもある、とは花京院の説である。
花京院らしく感情を挟むと、その事実は私に『嬉しい』を感じさせる。
本日はその第1回目ミーティングであるため、そろそろ移動しなければならない。
ログの書き出しを一旦停止させる。
この報告書のアクセス権を、ルート権限でもって私、つまり承太郎と花京院のリードオンリーとする。

 
 
 
 
 

ある工学者=承太郎+花京院 でした。
裏設定としては、悪意あるクラッカーの丘さんが、SPW財団のロボットJ-003=K-001に侵入、バックアップ用の非公開ログファイルを盗みましたっていう。
暗号解読して読んだらあまりにも萌えたのでまとめ直してウェブに載せてやりました(悪意)。