セックスしないと出られない部屋に閉じ込められた時の話(R-18)

 
 
 
僕の名は花京院典明。
突然だが僕は今、セックスしないと出られない部屋に閉じ込められている。
いや、何も自分から好き好んで入ったわけではない。
道端で談笑していた時、空から急に網が降ってきて、捉えられてしまったのだ。
抵抗していたのもあって、かつがれて連れて行かれる最中のことは、あまり覚えていない。
今考えてみれば、おとなしくして道順を記憶しておくべきだった。
しくじった。
後悔先に立たずだが。
そして気がついた時には、見知らぬ部屋に閉じ込められ、観察されていたのだ。
有り体に言えば、僕らはキャトられてしまったというわけだ。
そう、僕は一人ではない。
そりゃあセックスしないと出られない部屋なんだから、一人のはずはないのだが。
その、セックスの相手として用意されているのが、僕と道端で話していて一緒にキャトられてしまった友人で、名を空条承太郎という。
彼は10人いれば20人振り向くといった具合の美丈夫で、外見も中身もとても素晴らしい人物だ。
彼とセックスをしたい人なら星の数ほど……いけない、セックスから頭を離そう。
いや離してどうする、それが主題だ。
そう、それこそが、僕らがここに閉じ込められている理由なのだから。
初めキャトられて、この一面だけがガラス張りになっている部屋に入れられたときには、すわ人体実験かそれとも食われるのかと緊張したがそんなことは起こらず、毎日食べ物を与えられてはただ観察されているだけなのだ。
僕のハイエロファント・グリーンや承太郎のスタープラチナで壁を攻撃してみたが、びくともしなかった。
宇宙人の技術力ってすごいんだな。
その宇宙人というのは、すごくでかい。
承太郎も背が高いが、比ではない。
軽く僕らの5倍以上はある。
彼らは入れ替わり立ち代りガラスの前にやってきては、何やら記録をとっている。
カメラっぽいものが常に向けられているが、それだけでは足りないようだ。
僕らが捕まってから3日くらいして、彼らに僕らを直接害する気はないと分かり始めてきたところで、僕らは一本の映像を見せられた。
………男女が性行為をしているビデオだった。
こうして僕らは、彼らの目的を知ったのだ。

 
 
 

「で、どーすんだ。俺とセックスすんのか、花京院」
「できるわけがないッ!!」
承太郎は妙に余裕そうな態度で壁に背を預けて座っている。
「大体僕らは男同士だ。彼らはそれに気付いてないか、あるいは男同士じゃセックスできないのを知らないんだ。かくなる上は彼らに何とかしてこのことを…」
「できるぜ」
「えっ?」
僕は承太郎の顔を見た。
何やらあくどい表情をしている。
ちなみにこの音声も録音されていると思うんだが、デカブツの宇宙人の皆さんとは言葉が通じないのは、よく身にしみている。
「男同士でもセックスはできる、と言ったんだぜ」
「うそだろ承太郎」
「本当だぜ。何ならやってみるか?」
「ここで!?」
「ここ以外のどこでやるんだ。それしか出る方法はねえだろう。俺とお前がセックスする。それをあいつらが記録する。そして俺たちはここから出て行く。それでいいじゃあねえか」
「よ、よくはないだろ!彼らだって男女の営みのデータが欲しいんだろうし!」
「レアケースのデータを提示してやるんだから問題ねえだろ。それとも俺とするのが嫌なのか?」
「そういう問題じゃあ…!」
僕は言葉をつまらせた。
もし承太郎とそんなことになったら……そんなことができるなら、とても嬉しい、と思っていることを悟られてはならない。
そう、嬉しいのだ。
ここだけの話、僕はこの男、空条承太郎をそういう意味で好いている。
彼の親友というポジションに収まって図々しい顔をしながら、心の中では汚い思いでいっぱいなのだ。
彼を利用させてもらって、よくない考えにふけったことも、一度や二度ではない。
そんなことを彼に知られてはならない。
彼は優しいやつだから、知ったところで僕を切るだなんてしないかもしれないが、万に一つでもその可能性があるのなら、僕は賭けに出ることはできない。
彼の親友という席は、真綿にくるまれていてとてもあたたかいのだ。
「嫌とかそういう話ではなくて、そんなことをしなくても出られる方法を探すべきだと思うんだ」
「オラオラもエメラルドスプラッシュも試してみたぜ。他に何か方法があるのか?」
「それは……」
「なあ花京院。もしここが『片方が死なないと出られない部屋』なら、俺も別の方法を考えるぜ。だが今回求められているのはセックスだ。死ぬわけでもないし、そのくらいなら試してみてもいいと思うぜ」
「そりゃあ……君にとっては『そのくらい』かもしれないが…」
「なんだてめえ、童貞か?」
「どッ…!」
「そいつァよかった」
「は?」
「なんでもねえ。まあ確かに童貞非処女は嫌かもしれねえなあ」
「えっそれ、僕が突っ込まれる方なのか!?」
「嫌か」
「いやだから、嫌とかそういう問題じゃあなくて…!」
正直に言うと(承太郎には口が裂けても言えないが)僕が突っ込まれる側なのなら、好都合だ。
なぜなら僕は、いつも彼の下にいる妄想ばかりしていたからだ。
彼の圧倒的雄に屈服したい。
じゃあなくて。
「そ、そういう君こそ嫌じゃあないのか?男とセックスだなんて」
「嫌だぜ」
「あっ……まあ、そうだよな」
「何を落ち込んでるんだ?俺は男とセックスするのは御免だってだけで、お前とするのは問題ないぜ。つーかさっきからそう誘っているんだが」
「……僕だって男だぞ」
「オメーは特別だ」
「………特別……」
どうしよう。
すごく嬉しい。
ここから出るためとはいえ、やりたくなんかない男とのセックスを、それでも僕相手ならできると言うのか。
「…君が……そこまで言うなら………ここから出るためだし……」
「ったく、さっさと覚悟決めやいいんだよ。俺に惚れてるくせに」
「へ」
「なんでもねえぜ。そうとなったらさっさとやるぞ。オラむこう向け」
「う、うん」
僕がおとなしく承太郎の言うとおりにすれば、彼は背中からのしかかってきた。
そのまま首筋に口付けられる。
やわやわと甘咬みしてから、彼は僕の首の後ろ、うなじのあたりを執拗に舐めてきた。
彼の太い腕が降りてきて、僕の腹の下の方、きわどいところよりは少し上を撫でてくる。
微妙な刺激がもどかしくて、でもなんだか妙な気持ちになる。
「ふぎゃっ!?」
ふ、と耳に息を吹きかけられて体が跳ねた。
「今からそんなんで大丈夫かよ」
「だ、だって」
「そういや初めてだったな。嬉しいぜ。なるべく優しくはしてやりたいが、多少は痛いだろうから覚悟しとけよ」
「う、うん…」
そう言われるとやはり怖い。
恐怖を克服した身とはいえ、それとは恐怖の種類が違う。
けれど、背中越しに感じる承太郎の、僕より少しだけ高い体温が、確かな安心感をくれた。
承太郎が体をずらして、僕の後ろ側がよく見える体勢になった。
四つん這いになって見下ろされるというのは、どうにも恥ずかしい。
「あんまり見ないでくれないか…」
「見ないと怪我させるかもしれねえだろ」
「そうだけどさ」
「諦めろ」
承太郎はばっさりそう言うと、奥まったところに舌を這わせた。
「うう、やっぱりそこ使うのか…」
「他にねえだろ」
「そうだけどさ……うー、変な気分だ」
「がんばれ。俺も変な気分だ」
「え、」
それってどういう、という声は喉の奥に吸い込まれた。
承太郎の舌先が、そこに入り込んでいる。
「うわあああ…」
「落ち着け。痛いだろうが、少しは慣らしておかねえと、あとでもっと痛いことになんぞ」
「うう、分かってるよ…!」
僕は深呼吸を繰り返すことでなんとか体の力を抜こうとした。
だが後ろで動く承太郎の舌の感触と、そして彼が僕にそんなことをしているんだという考えが、僕の身を焦がした。
「じょう、ったろう…」
「なんだ」
「ぼ、ぼく、その………。一緒に閉じ込められたのが、君でよかったよ」
「てめぇ…!」
ずるり、と舌が引きぬかれて、ああ思ったより深く入っていたんだな、と思った。
「もう我慢できねえ。入れるぞ」
「えっ、ちょ、待って、待ってくれ承太郎」
「なんだ、我慢できねえっつってんだろ」
「ご、ごめん。でも、ええと、その……」
承太郎の顔が見たくなって、僕はそっと後ろを振り返った。
彼はついぞ見たことがないほどの切羽詰まった表情をしていた。
「や、やさしくして、くれ」
「…………無理だ」
「えっ」
裂けるような痛み、それから圧迫感。
「うあ、っふあ、うにゃ、っあ」
「っく、花京院、てめーん中、熱い、な…!」
「うええ…」
僕はみっともなく泣いてしまっていた。
だって痛い。
これ慣れるんだろうか。
でも慣れないと次はないよな。
「じょ、た、っろ、きもち、い…?」
「ああ、最高だ、ぜっ!てめー、は、」
「いたいぃ……」
「だろうなあ…」
だってそりゃあ、承太郎の承太郎さんは非常に大きいのだ。
砲身についているトゲは、子宮を刺激して排卵を促すためのものだから、女性の体を傷つけないように、トゲといっても硬いものではない。
だが、出口としてしか使ったことのなかった柔らかい場所がチクチクするのだ。
痛い。
すごく痛い。
でもこれ慣れたら気持ちいいかもしれない……。
「花京院、俺は、てめーのこと、好き、っだぜ…!」
「!!……承太郎…、僕もだ、僕も君の事が、好きだよ…!」
承太郎が喉の奥から唸り声を上げて、僕の尻尾に自分のそれを絡みつけてきたから、僕もその尻尾を強く握り返した。

 
 
 
  
 
 
 
 

「ふみゃああああ!!」
「にゃあああ」

 
 
 

「あれ、主任、この猫オス同士じゃあないですか…?」
「えっ」