認識あらため・改(R-18)

「認識あらため」本番バージョン。
こちらだけでも読めます。

 
 
 
 
 

「ローション、コンドーム、その他色々を用意したぜ花京院!」
「僕は洗浄浣腸その他体を清めてきた!いよいよだな承太郎!」
「おう、この日を待ちわびたぜ!」
僕らは空条家のだだっ広い部屋の真ん中に正座して向かい合っていた。
正確には真ん中には布団が敷いてあるので、それを挟んだ向かい合わせなのだが、そんなことはどうでもいい。
僕らは、これから、セックスをするのだ。
そう、するのだ!
 
 

今日まで長かった。
旅の間から花京院はずっと、俺のことを好きだという気持ちを隠しもしないで見つめてきていた。
それがなぜだか悪い気はしなくて、不思議に思っていたら、ジジイから
「お前らどこまでやってんのン?ラブラブなのはいいけど、敵の襲撃もあるんだからあんまり花京院に無理させちゃあ駄目じゃよ!」
と言われて、そうか俺もこいつが好きなのかと自覚した。
そのあたりから急に花京院の態度がよそよそしくなったので、まどろっこしいことが嫌いな俺は強硬手段に出た。
ちょっとくらい無理矢理になっても仕方ないかと思っていたが、あっさり許されたので合意の上ということになった。
よかったよかった。
ジジイに言われたからではないが、花京院にあまり負担をかけたくなかったので、その時は触るだけにとどめた。
それでも十分、とてもよかったので、俺達は同室になった日はちょくちょくやっていた。
この旅が終わったら、きちんと調べて、それから本番に臨もうと思っていた、のだが。
 
 

ところがそれは、長い間かなわなかった。
あの旅から僕らは、生還することはできたけれど、無事ではすまなかった。
悪の権化の拳は僕の腹を貫き、僕はほとんど死にかけた。
長いこと生死の境をさまよい、ようやく目を覚ました時には、季節が一周巡っていた。
承太郎は死にぞこないの僕に見切りをつけることができなかったと見えて、旅の間は決して見せなかった弱った顔で、僕の目覚めを喜んだ。
リハビリを始めた僕のところへ毎日やってきてはとりとめもない話をしてくれる彼の存在に、どれほど助けられたか分からない。
息子が行方不明になって、死にかけて帰ってきたのだ、僕の両親にとって承太郎は、すこぶる悪い印象があったらしい。
けれど彼がそうやっていつも僕の病室にやってきて、僕もそれに大いに励まされていると知って、だんだん態度を和らげていった。
だが。
 
 

だがさすがに、
「息子さんと結婚を前提に交際する許可をください」
と言った時は目を白黒させていた。
それから反対された。
俺は彼とともに、何度でも頭を下げるつもりだった。
けれど花京院は、先に僕だけに話させて欲しいと言った。
その場にはいなかったから、あとで聞いたことしか知らないのだが、花京院は、今まで気付いていなかったが、自分は女性を愛することができないということを、冷静に、丁寧にカミングアウトしたらしい。
それは彼らの育て方や環境の問題ではなく、生まれつきのもので、自分にとってはそれが自然なことなのだ、と。
彼らは戸惑い、「しかし」「それでも」と反対した。
そこで今度は俺も一緒になって、一時の過ちではなく本気でお互いを想い合っているのだと説得した。
彼らもだんだんにほだされていって、最終的には俺達のことを認めてくれた。
決定打は少々気に食わなかったが。
 
 

承太郎は気に食わないと思っているようだが、僕の両親が僕らのことを認めてくれた決定打は、ホリィさんだった。
ホリィさんは初めて僕の父さんと母さんに会った時、自分を助けるために僕がこうなったのだと包み隠さず話し、頭を下げたらしい。
父さんと母さんが謝罪と感謝を受け入れたら、次に彼女は、僕のことを褒めに褒めちぎった。
優しい、カッコいい、頭がいい、一所懸命、和を大事にする、紳士的エトセトラエトセトラ。
それから、花京院くんのおかげで、うちの承太郎がとても柔らかく笑えるようになった。
思い出すだけでも恥ずかしいが、彼女はそれをお世辞ではなく心から、何の魂胆も持たずに両親に告げた。
こんな素敵な子を選ぶなんて、息子も見る目がある。
あの女神にそこまで言われて反対できるほど、父さんも母さんも冷徹ではなかった。
承太郎がその日のリハビリを終えた僕の病室で、いつものように交際の許可を求めた時、父さんは
「顔を上げなさい」
と言った。
「君たちの気持ちは分かった。息子をよろしく頼む」
とも。
こうして僕らは、親公認の恋人同士となったのだ。
さて、前置きが長くなったが。

 
 
晴れて恋人になった俺達だが、障害は多かった。
まず一番大きなものが、花京院の体調だ。
穴を塞いだばかりであちこち調子の悪い彼の体に、日々のリハビリだけでも大変だというのに、無体を強いることはできない。
彼の回復を励まして待ちながら、来たるべき日に備えて、俺は調査をすることにした。
とはいえ経験者は周りにいない。
本やビデオなども見てみたが、男女のそれと同じで、誇大表現の多いエンターテイメントであろうから、うのみにすることはできない。
そこで俺は、いわゆるひとつの「そういう場」に足を運んだ。
花京院のような華奢な(と本人に言うと殴られるが)タイプがモテるのかとおもいきやそうでもなく、なぜか俺の周りに人が集まった。
俺は彼らに有益なお話を聞き、お誘いは丁重にお断り、あるいは丁重にぶちのめし、花京院とのその日に向けて準備を整えた。
少々驚いたのは、特定のパートナーがいる場合でも、挿入まではしないというカップルが一定数いたことだ。
気持ちを確かめ合うのに、必ずしもしなければならないことではないのだと。
まあ正直に言うとぶち込んで揺さぶってめちゃめちゃにしてやりたいのだが、それもひとつの形かと思って、
「突っ込まないって手もあるぜ」
と伝えたら、
「えっでも僕突っ込まれたい」
と返された。
分かって言ってんのかこいつは。
しかたがないのでとりあえずその場はキスだけで――ねっとり濃いやつだが――済ませたのだが、花京院の方はそれだけでは済まなかったようで、高熱を出して二人で厳重注意を受けた。
 
 

そんな風に、ちょっと熱を持っただけで大変だった僕だが、なんとか無事に回復し、学校に通えるまでになった。
ところが学校では、JOJOがホモだという噂が流れていた。
よっぽどおおっぴらに調べたらしい。
でもって、復学してきて以来、ずっとJOJOの隣にいる僕が、その相手だと。
僕はたいそう気をもんで、なんとかその噂を消そうと努力しようとした。
なのだが承太郎が、
「別に嘘じゃあなくて本当のことなんだからいいだろ」
と言ってきたので、あれ、そうかな…そうだな…だったらいいのか…?という気持ちになってしまった。
確かに『あらぬ』噂ではない。
承太郎は否定しないどころか、
「ホモは蔑称だからゲイといえ」
「べっしょうってなんだよJOJOォ」
「悪口って意味だ」
とか言っていた。
恥ずかしいだろと言ったら
「何がだ?女を好きになるのは恥ずかしくねえだろ?男でも同じじゃあねえか?」
と言われた。
そんなもんだろうか?
承太郎がそうと言ったらそうでしなかいので、いまいち世間一般の感覚が分からなくなる。
スタンド使いで吸血鬼を倒す旅をしていた僕らに世間一般も何もないけど。
さてそれで、体調も前と同じとは言えないがずいぶん回復したことだし、と、やっと冒頭に戻るわけである。
 
 

俺は小道具を揃え、花京院は体を清め、俺達はとうとう、本番を迎えることとなった。
ちなみに潤滑剤はとろとろタイプ、さらさらタイプ、軟膏といくつも用意してある。
自分のサイズに合わせたゴムも準備したが、最初から気持ちよくなれるものではないらしいので、今日のところはちょっと広げて慣らして、指が入ればいいかくらいで考えているのだが、花京院は妙にやる気満々である。
「君のはでかいけどなんとか頑張る。二人で気持ちよくなろうな!」
とか言ってくるので俺の中の理性を総動員させなければならなかった。
そのためには、とにもかくにもこいつの体を俺に合うようにする必要がある。
状態がよく見えるように(花京院はものすごく恥ずかしがったが)布団の上に四つん這いにさせ、ローションを塗りたくった指を一本、ゆっくり入れた。
追い返すような、押し出すような動きをされるが、押し込まず抜きもせず、慣れるまで待つ。
花京院は息を吐いて、なんとか力を抜こうと頑張っていた。
「痛かったらすぐ言えよ」
「痛くは…ないよ……なんかちょっと気持ち悪い感じがするだけで…あ、大丈夫そんなにひどくはない」
とは言うものの、ヤツの体は毛が立ってじっとりと汗ばんでいる。
俺は反応を見つつ止まりながら、ゆっくりゆっくり右手の指を進めていった。
左手はエレクトした自分を慰めるのに必死である。
ある程度埋まったら、今度もゆっくり抜き差しして、モノが入るのに慣れさせようとした。
花京院はフーフーと大きく息をしている。
ふと、指がある一点をかすめたとき。
「っひゃっぁあ!?」
「どうした!?」
花京院は小さくびくりと跳ねて、上半身が布団の上にがくりと倒れた。
「なんっ…そこ、変だ…!」
「ここか?」
「やああぁぁっ!あー……ハァ…そこ、なんかビリってくる…あっ!あれだ、多分そこが前立腺ってやつだ!よし承太郎、そこを重点的に攻めるんだ!」
「おう任せとけ」
 
 

承太郎は言葉通り、ぐりぐりと押したりひっかくような動きをしたりと、その場所を攻め立てた。
目の前がちかちかする。
体に力が入らない。
気持ちいいのかどうかは分からないが、先程までの異物感はかなり減った。
「あッあ、じょ…たろぉ、もっとォ…」
とか口走っちゃってるから、おそらく思ってるより気持ちいいのではないだろうか。
あ、なんか指増やされた気がする。
別々に動いてて変な感じだ。
でも悪くない。
「ッてめー、ちったァおとなしくしろ、入れたくなんだろうが、」
「っあ、入れ、入れてっ…」
「……分かって、言ってん、のか!」
「分かってる、からぁ、入れて、…早くッ……承太郎の、欲し……」
「…この野郎ッ!」
「あっう、あっ、あぁッあああ!あぁ―――」
「入った、ぜ…」
「ん、うん、分かる…ハァ…ぼ、僕は、大丈夫だから、動いて、いいよっ……っああ、ん、あ、は、あ、ッああああぁ!?やっそこ、」
「ここが、好きなんだろッ」
「やぁあ、そこ、そこは、らめえしんじゃう!!!」
いつの間にか承太郎の手が僕の前にも伸ばされていて、頭は快楽を処理しきれなくなって、一度大きく跳ねてから、僕の意識はブラックアウトした。
 
 

ゴムやらなにやらを片付けて、事前にしっかり用意しておいた濡れタオルで汚れを落としている途中で、花京院の目が覚めた。
「あ、承太郎…」
「おう、気持ち悪いとことかねえか」
「うん、大丈夫…ただいつも使わないところに力入れた気がするから、明日とかつらいかもしれない」
「うちでゆっくりしていけ」
「そうだね……なあ、承太郎」
「何だ」
「僕ら、ちゃんと最後までできたな。……嬉しい」
そんなことを言ってへにゃりと笑うものだから、俺は辛抱たまらなくなって、やつの顔のあちこちにキスを降らせた。
今回はお互い余裕がなかったが、次回はたっぷり前戯をしてキスマークもつけてやる。
「しかし聞いた話じゃ、弱いところを攻めても初めてじゃあそうたいして気持ちよくはならないってことだったが」
「じゃあ僕、ネコの才能あったんだな。やったな!よし承太郎、次は君がガツガツエロエロに腰を動かしてもいいように頑張ろう!」
「てめえは…だから…煽んなっつってんだろ!もう寝ろ!!」
そう言って俺は、またちょっと熱を持ち始めた体をごまかして、花京院に布団をかけた。
なんだかんだ花京院も疲れていたようで、すぐに寝息を立て始める。
その寝顔を見て俺は、やっぱりこいつは、俺の隣が似合いだ、と思ったのだった。