お犬さまと一緒 (8)見つけました

 
僕の声に振り返った青年は、承太郎ではなかった。
鼻筋や体格は見知った形だったが、承太郎より日本人らしくない顔をしている。
承太郎の暗い緑より、もう少し青に近い緑の目を持っていた。
ついまじまじと彼の顔を見つめてしまって、あわてて目をそらす。
すると、青年の大きな体に隠れていた少年が目に留まった。
金の巻き毛の美少年だ。
彼は、どこかで見たような青い瞳を僕に向け、「カキョーイン…さん」と呟いた。
大柄な青年の方が、驚いている僕の顔を見ながら「ああ」と呟いた。
「承太郎の…」
「!!承太郎を知ってるんですか、彼は今どこに居るんです!?」
「お・落ち着いて、落ち着いて」
詰め寄る僕を制して彼が苦笑する。
「君は花京院…だね、承太郎と暮らしてた」
そう言って、承太郎によく似た青年と金髪の少年は顔を見合わせた。
二人して何か思案しているようだったが、ややあって少年の方が口を開いた。
「いいんじゃないですか。いつまでもあのままにしておくわけにはいきませんし」
ちらりと僕を空の目で見る。
その色に何か既視感を覚えたが、青年の次の言葉にそれはどうでもよくなった。
「承太郎は今、僕らと暮らしている。会いに来るかい?」

 
 
 

青年の名はジョナサン、少年の名はジョルノといった。
それらの名は明らかに聞き覚えがあったけれど、僕の頭の中を占めているのはたった一人のことだったので、彼らに問いただす気も起きなかった。
「パードレは」
「寝ているから大丈夫だろう」
という会話にも興味が湧かない。
承太郎、承太郎、承太郎、承太郎、承太郎、承太郎、承太郎、承太郎、承太郎、
「着いたよ」
はっとして顔を上げる。
目の前は、ここ高級住宅街の中でも特に大きな洋風の屋敷の玄関だった。
知らない間に門を通過して庭を通ってきていたらしい。
インターホンを鳴らすと、仰々しいカメラが僕らの顔を捕らえ、直後にスピーカーから男の声がした。
「お帰りなさいませ、ジョナサン様、ジョルノ様。そちらのお方は?」
「花京院さんだ。承太郎を呼んでくれないか?」
ジョナサンさんがそう言ってから数秒後にけたたましい音がして、ややあって勢いよく扉が開いた。
そこに居たのは、鏡で見た僕の顔と負けず劣らず憔悴した顔をした、承太郎だった。