みどりのはね

リクエストネタ承花SS

承太郎は昆虫を専門に研究している学者である。
虫の世界は奥が深い。
承太郎はどちらかというと、昆虫の生態の方に興味がある。
美しい昆虫を並べて飾って楽しむという趣味は、理解はできるが持ってはいない。
彼が標本を作るとき、それは学術的なものになる。
美しい昆虫は確かに好きだが、一般に「美しくない」といわれる昆虫たちも好きだ。
さてそんな承太郎だが、ある日フィールドワーク中に珍しい虫を捕まえた。
花京院である。
花京院はハチの一種で、有毒である。
承太郎は慎重にその花京院をとらえると、家に持って帰った。
元々弱っていたようで、力なく羽を震わせている。
承太郎は広い虫かごに花京院を移した。
花京院はしばらくウロウロしていたが、やがて昆虫ゼリーを吸い始めた。
承太郎はなんだかこの花京院が気に入ってしまって、目に入るところに虫かごを置いた。
書きものをしているときに顔を上げると、緑の体の花京院がこちらを見ているので、ふっと心が暖かくなる。
休憩にコーヒーを飲むときだとか、寝る前に歯磨きをするときだとか、なんでもない日常の中に、その花京院はするりと入り込んだ。
そうして承太郎をじっと黒い瞳で見つめていた花京院は、冬に入る前に動かなくなった。
承太郎は彼の標本を作ることにした。
標本箱は、普段使っているものより少しいいもの――機能ではなく装飾が――を用意した。
体の形を整えている最中、死んだと思った花京院が、ぴくりと動いた、気がした。
気のせいだったかもしれないが。
そしていつものように、丸く小さな黒目で、慈しむように承太郎を見上げた。
気のせい、だったかもしれないが。
できあがった標本を、承太郎は机の上に飾った。
これでいつでも花京院を見つめることができるし、それに、花京院からも承太郎がよく見えるだろう。

みどりのはね」への3件のフィードバック

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