鉄獄より愛をこめて 43.5F(R-18)

”悪魔といっしょに眠ったならば、頭痛ともに目が覚めるであろう。”(原文ママ)

自分の食べ物が灰になって、承太郎は「さて」と言った。

「これでもう、お前が俺から逃げる理由がなくなったわけだ」
「ああ、そうだな。悪かったよ」
「分かったんだからもういいぜ」
承太郎はそう言って、いい匂いのする花でできた花京院の髪にキスを落とした。
花京院はくすぐったそうに身を捩ってから、首を伸ばして承太郎の顎にキスをした。
それから服を脱いで、ベッドの上に乗り上げ……「あれっ!?」と声を上げた。
「今度はどうした」
「ちょ、ちょっと待って今確かめ……ああッ!やばい!!尻に穴がない!!!」
「何だと!!??」
それも当然である。
エントは水分を主食にしているのだから、排泄の器官はないのだ。
ちなみに魂を主食にしている承太郎にもない。
「前の方は枝みたいなのがあるけれど……困ったぞ。どうしよう」
花京院はベッドの上に座って途方に暮れた。
けれど一方の承太郎は、あまり困ったとか悲しいといった気持ちにはなっていなかった。
何しろ、ベッドの上の相棒兼恋人が、とっても綺麗なのだ。
ハーフエルフのこいつもよかったが、エントもなかなかじゃあねえか。
白樺の肌はいきいきとして、膝や肘には魅力的な節、そこから顔を出す小ぶりの葉の瑞々しさ。
頭のてっぺんや目の縁に生える、ピンクがかった赤い花の見事さは言うに及ばない。
彼の両の足の間には、そこだけ少し色の違うねじれた枝が生えている。
承太郎は十二分に興奮しながら彼の上にのしかかり、そこに手を伸ばした。
「ちょっ……じょうた、っあああ!?あ、う、っひ、あぁあー……」
「…………ずいぶん早いな」
承太郎は少々驚きながら、枝の表面に染み出してきたカラメル色の液体を舐めた。
「樹蜜の味がする」
「とうとう僕のまで甘く……」
花京院は上気してちょっと茶色みの増した頬を手で隠した。
「エントだからかな、君の熱い手で触られると、それだけで駄目だ。何も考えられなくなってしまう」
「だったら考えなければいい」
承太郎はそう言って、花京院の体を攻め立てた。
どこもかしこも承太郎の燃えるような手や舌の前に、あっけなく陥落した。
どころか、花京院は承太郎のそれを口に含んだだけで、触ってもいないのに蜜――比喩ではなく――を溢れさせるのだ。
承太郎はそんな彼の様子を見て、心の底から満足した。
花京院のごつごつした手から与えられる刺激も、甘く咲く花も、とてもよいものだ。
承太郎は黒い自分のものと、枝のような花京院のものを合わせて一緒に握った。
「うわっ、ちょっま、んんん……!」
「早すぎだろ」
「熱いんだよ!仕方ないだろ!」
花京院の小枝からじわじわ溢れる蜜に助けられて、承太郎は手を動かした。
花京院の体から、けぶるほどの甘い香りが立ち上ってくる。
その香りに、承太郎も頭をぼんやりさせながら、自分と恋人を追い上げた。
唇を合わせながら二人で達した時には、部屋の中は香りでむせ返るほどだった。