>>戻る

鉄獄より愛をこめて - 34階


”あなたの栄光は伝説として語り継がれることでしょう。”


オークや巨人といった他のモンスターも撃破してから、二人は他の部屋へ足を踏み入れ、動かないミミックモンスターや鈍すぎて眠ったままだったモンスターを倒していった。
「……承太郎!」
「何がいる」
「あそこの棚の向こう。本がいくつか置いてあるんだが、中に一冊、ラアルの破壊集大成がいる」
「ほう」
「手を出すなよ。あいつとは別のやつだが、倒してやらないと気が済まない」
「まあ頑張れ」
花京院は自分と承太郎に耐性の魔法を張ると、岩石溶解の呪文を唱えて棚を溶かした。
回りこむなんていうのは、愚の骨頂である。
”ラアルの”が直接見える場所に穴を開けたのではない。
”ラアルの”からは、花京院の姿が見えないようなところである。
花京院はその隙間に向けて、広範囲にダメージの及ぶファイア・ボールの魔法を撃ち込んだ。
”ラアルの”は自分を攻撃してくる相手に気付くことなく灰と化した。
承太郎はヒュウっと口笛を吹いた。
LOSトリックだ。
花京院は本当に優秀なメイジだ。
承太郎と花京院は、ミミックを倒してアイテムを拾いながら部屋を回った。
全ての部屋の奥にデスソードがおり、ウォー・ハンマーを落としたので、ザックの中がいっぱいいっぱいである。
「さっさと持ち帰って鑑定しようぜ」
「ああ、いい資金源になりそうだ」


二人は倉庫の前で鑑定の杖を使いまくった。
「これは上質上質エゴ(特殊な能力)はついていないが、修正値がついて少しだけ強い武器や防具。プラス分だけ高く売れる。。これも」
「売り物だな。この指輪もだな」
「これは(パターン)(パターン)エゴ武器のエゴで、嬉しいものの一つ。色々な耐性がついていて、ものによってはアーティファクトを上回るものすらある。(パターン)基本の能力に加えランダムな能力がついていることもあるが、それは上位の鑑定である*鑑定*をしないと分からない。だ。*鑑定*しよう」
「ん?」
「どうした、承太郎?」
「いや、このウォー・ハンマーなんだが。なんだか特別製のもののような気がするぜ」
「へえ、鑑定してみろよ」
「おう」
承太郎が鑑定の杖を振るう。
「……これは」
「一体何だったんだ?」
「………ウォー・ハンマー『ミュルニール』だ」
「『ミュルニール』ぅ!?」
花京院は素っ頓狂な声を上げた。
ウォー・ハンマー『ミュルニール』といえば、神話時代の伝説の武器である。
「それは……確かにモンスターどもから取り戻したくなるよな」
「道理で重いと思ったぜ」
『ミュルニール』は神の武器なだけあって、とても大きい。
「しかし承太郎、君、それ持つの似合うぞ」
「やめろ、どうせ返さなきゃいけねえブツだ」
「………持ち逃げしちゃおうか」
「……………悪くねえな」
「…………………」
「………………………」
二人は大いに悩んだが、これを図書館で*鑑定*した時に足がつくとの結論になり、城へ持っていくことにした。
役人はそれはそれは喜んだ。
「ああ!ありがたい!モンスターを一掃してくれるとは。あの蔵は劇場にするつもりだったんだ、助かった。例の武器は見つかったかね?」
「ああ、これだろう」
承太郎が『ミュルニール』を差し出すと、役人は笑顔を見せた。
「クエストの報酬なんだが、その武器でどうかな」
「これを?」
二人は驚いて役人の顔を見た。
「ああ。主人もそれで納得している。元々使える兵士はいなかったし、宝物庫がモンスターどもに占領されて、奪われてしまったものだからな。よかったら、これからの冒険に役立てて欲しい」
「それは……ありがとう!」
こうして二人は、アーティファクト、ウォー・ハンマー『ミュルニール』を手に入れたのだ。


『ミュルニール』を図書館に持って行くと、司書のマインドフレアは目を丸くした。
「よく見つけたな。うぬ、これはかの神トールが使っていたものに違いない。雷の力を帯びていて、打ち振るえば電撃が敵の体を焦がすだろう。それにもちろん、ジャイアントに対してスレイスレイ弱点攻撃みたいなもの。デーモンにスレイのついたアイテムはデーモンスレイヤーということになる。普通のスレイと効果絶大なスレイの2種類ある。がついている」
物知りのマインドフレアは、トール神についての逸話を色々と聞かせてくれた。
ウォー・ハンマーにしては珍しく、投げても手元に戻ってくるというのは、トールが使っていた頃からの特性らしい。
「腕力と器用に修正値がついているから、ダメージが期待できるぞ。重い武器だからな、命中精度が気になるなら両手持ちするといい」
「分かったぜ」
「ありがとう」
二人はマインドフレアに礼金を弾んだ。
「承太郎、早速装備してみろよ」
「おう。こうか?」
『ミュルニール』を構えた大きなバルログは、その邪悪さに反して、神々しくさえあった。
「……うん、すごくいいと思うな」
「なんだ、どうした。顔が赤いぞ」
「うるさいな!見とれてたんだよ!!」


>>戻る



Copyright(c) 2008 - 2014 heieieiei.org