キラキラ光るものをもらうこと

こっちは博士×ハナアルキ院

ハナアルキの花京院は、キラキラしたものが好きだ。
みずみずしい赤い果実の光もたまらないし、小川の水面が光るのも、朝露に濡れたお花が光るのも好ましい。
そして何より、自分の大事なひとのあの目、あれ以上のすてきなキラキラは他に見たことがない。
そんな花京院だから、大事なひと――承太郎がくれた「指輪」も気になっている。
「結婚」するときに贈られたものだ。
それは一度花京院の真ん中の指(花京院の指は3本である)につけられたが、はずみで飲み込むといけないからと、写真だけ撮られてすぐに外されてしまったのだ。
あれは不思議な光り方をしていた。
あれが気になる。
花京院は承太郎の机の上に飛び乗った。
その指輪は、透明なケースに入れられて飾られている。
花京院がそれをじっと見ていると、「こんなところにいたのか、花京院」と声がして、承太郎がそっと背中を撫でてきた。
花京院はそのまま、承太郎の手の上に飛び上がった。
花京院は承太郎の手が好きだ。
大きくて暖かくて少し硬くて、海の匂いがする。
その手の、てのひらに乗る花京院から見て右から2番目の指に、あの指輪と同じ光があった。
そういえば、これを彼の指につける手伝いをしたはずだ。
花京院は承太郎の指にはまる金属をそっと触った。
「気になるのか?お前のは飾ってあるだけだもんな。そうだな……」
承太郎は何やら思案していた。

それから数日後、花京院は「贈り物をしたい」と承太郎に呼び止められた。
チェリーかお花か、おいしい虫だろうか。
花京院は首を傾げて彼の手の上に乗った。
承太郎がもう片方の手で取り出したもの、それは、あの小さなものとは別の指輪だった。
指輪といってもかなり大きい。
特注品なのだが、花京院はそんなことは知らない。
輪は広いが細身である。
その輪の一箇所に、緑色に光るものがくっついている。
石のように固いが、とてもキラキラしている。
丸くはないがゴツゴツしているのともちょっと違い、表面は規則正しく削れている。
花京院はすっかりこの石に夢中になった。
こんなもの初めてだ。
これをどうしようか考えて、花京院は自分の体につけることにした。
後ろ足のない尻をくぐらせ、首よりちょっと後ろのところにはめる。
花京院はとても満足した。
承太郎も、「迷ったが小さいエメラルドにしてよかったぜ」と言っている。
その重みで、花京院の腹の側に石が来るようになっている。
ちょうど、花京院が跳ねるとその輝きがきらりと見えるところだ。
花京院は楽しくなってあちこちを飛び回った。
屋内でも綺麗だし、外でもとっても綺麗だ。
研究所の他のスタッフたちも、笑顔――ちょっと諦めたような――で「よく似合うわねえ」と言ってくれる。
指輪を自慢気に見せびらかす花京院を見て、承太郎も「俺の嫁が今日もかわいい」と自慢気だった。

花京院は基本的に、四六時中承太郎と一緒にいるわけではない。
二人が一緒にいたいと思うときに一緒にいるのだ。
その時間がただ長いというだけなのだ。
花京院は外出もするが、室内にも彼が一人になれる空間がいくつか作られている。
寝室の棚の上にあるのは、大きな巻き貝に布を敷き詰めたもので、狭いところに入りたい気分のときによく利用されている。
花京院はそこに潜り込んで、指輪を脱いで大事にしまった。
花京院の脳みそはとてもちぃちゃいので、次の日もこの指輪のことを覚えているかどうかは怪しいが、またこの場所に来たときに思い出して身につけてくれるだろう。
それに。
それに、この指輪のことを忘れたってなくしたって、花京院にとって一番大事なキラキラ光るものは、いつもすぐそばにあるから、何があったって大丈夫なのだ。

指輪

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