プロポーズ成功例~鼻行類の場合~

リクエスト「ぷろぽーずするスパダリハナアルキ」
スパダリハナアルキ院×空条博士です。
別に入れたりしてないので乙女博士の承花でも読めなくはない。
あとちょっと虫注意。

ある日のことだ。
承太郎はキーボードを打っていた手を止め、背伸びをして立ち上がった。
夕飯の時間だ。
この島には、この研究所の他にはごく少数の原住民が住んでいる村があるくらいで、食事をするところといえば食堂ひとつしかない。
食堂は稼働時間が決められていて、夕食の時間を過ぎると、売店でおやつを買うしかなくなる。
その売店も夜には閉まるのだ。
不便といえば不便だが、生活リズムが崩れがちな研究者としては、逆にありがたくもあった。
食堂のスタッフのリーダーはアヴドゥルという男で、エジプト出身だが料理のレパートリーは幅広く、なんと和食までカバーしている。
カリフォルニアロールが一緒に並ぶのがちょっとアレだが。
さてそんな風に、承太郎が「シェフの気まぐれ定食E」をトレイに乗せて食事スペースを歩いていた時のこと、彼に「ぴぃ!」という声がかかった。
承太郎の恋人、花京院だ。
花京院は1日3食というリズムで食事をしないから、食堂で会うのは珍しい。
彼はだいたい、承太郎の机の上で食事をとる。
花京院は鼻行類、ハナアルキであった。
花京院は窓際の席で、自分の皿を前にして、承太郎に向かって耳をぱたぱたさせていた。
承太郎はそのテーブルにトレイを置き、腰掛けた。
花京院の前に置かれた小皿には、サプリメントを振りかけられた虫が乗っている。
丸々としたミルワームに、足を処理されたコオロギ、彩り野菜ならぬ彩り蝶々。
その皿はいまだ手を付けられていないようだった。
「俺を待っていたのか?」
承太郎がそう尋ねると、花京院はニッコリと笑った。
心臓が潰れるかと思った。
承太郎がミネラルウォーターで喉を潤したのを見届けてから、花京院は承太郎の左手に自分の右手を重ねた。
「花京院?」
花京院はじっと承太郎の目を見つめて、それから窓の外に目線を移した。
承太郎も外を見た。
南国の夏は陽が長い。
今まさに日が落ちる所だ。
空には得も言われぬ美しいグラデーションが広がっている。
光り輝く昼が過ぎ去り、静寂の夜が来るのだ。
「……綺麗だな」
承太郎はそう呟いて、花京院を見た。
花京院は承太郎の目をしっかりととらえていた。
「きみのほうがきれいだ」、そう言われた気がした。
それから花京院は、自分の皿の上から一番おいしいミルワームを取り上げると、承太郎の「シェフの気まぐれ定食E」の上にそっと乗せた。
そして両手で承太郎の左手の人差し指を握った。
「花京院……!」
承太郎は自分の頬が真っ赤に染まっているのを感じた。
胸がキュンキュン高鳴る。
「ああ、花京院。俺も同じ気持ちだ……分かった、一生ずっと一緒にいよう……!」

こうしてハナアルキ花京院からプロポーズを受けた承太郎は、急いで指輪の手配をすることになったのである。
ちなみにミルワームはおいしくいただいた。

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