まるいあな

承花SS

承太郎と花京院は幼なじみだった。
彼らは隣の家で生まれ、同じ幼稚園に通い、同じ学校に上がった。
ところが、学校から出て働くということになったとき、承太郎は重い気持ちで花京院に一緒の職場には行けないと打ち明けた。
「そんな!どうにかならないのかい?」
「家の都合なんだ。俺にはどうすることもできねえ。……だが、花京院」
承太郎はしっかと花京院を見つめた。
「違うところに就職したって、俺は絶対にお前に会いに行くぜ。これを今生の別れにするつもりはねえ」
「承太郎…!僕もだよ、きっと君を探すとも!」
そう言って彼らは別れた。
承太郎は一人になって、それでも立派な大人になった。
だが承太郎は、素直に敷かれたレールの上を走るつもりはなかった。
新入社員が呼び集められたとき、隙を見計らって、彼はさっと逃げ出した。
何か第六感のようなものが働いて、彼はとある路地裏の暗がりに逃げ込んだ。
はたしてそこには、同じように大人になった花京院がいた。
「ああ、承太郎!会いたかったよ」
「花京院、お前、どうしたんだ!?」
承太郎は驚きの声を上げた。
「腹にぽっかり穴があいちまってるぜ!」
「僕はこれが正しいんだ。それにしても君は、ずいぶんと格好良くなったね。背が高くてすてきだ」
「お前こそ、美人になったな。腹の穴はいただけねえが」
「だから僕は、これであってるんだってば。さあ承太郎、どこに行く?」
「どこだっていいさ、お前と一緒なら」

 
 
 

「ああ、手が滑ってしまった!仕方ない、廃棄処分だな」
部屋の隅に転がっていってしまったパンとドーナツは、同じゴミ箱に捨てられましたとさ。

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