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鉄獄より愛をこめて - 37階


”男なら38階まで来て俺と勝負だ。”


そこにいたのは、確かに承太郎だった。
だったが、その背は縮み、肩は前より薄くなり、顔にはあどけなさが浮かんでいる。
「なんだこりゃあ!?」
「なぜか君、子供になってしまっているんだよ」
言いながら近付いてきた花京院と並んでみれば、今や二人はほとんど同じくらいの身長になっていた。
「何があったっていうんだ…」
「そうか、きっと地獄への階段だ」
「あ?」
「この間、”城”で地獄への階段に出くわしただろう。そして悲鳴を上げられた。あいつの能力で、経験値を減少させられたんだよ。体が重いって言っていただろ、君、レベルが下がってステータスも減っているんだ。若返っているんだよ」
「……マジか」
だが、それ以外に原因が考えられない。
承太郎が苦い顔をしていると、花京院がその顔を覗きこんできた。
「何だ」
「承太郎、君、天使だな…」
「俺は悪魔だぜ」
「知ってるよ。天使天使天使タイプのモンスターの一種。レベルが上のものに大天使や熾天使などもいる。普通に強い。そのうえ善の属性を持っているせいで、悪属性を持っているモンスターと勝手に殴り合いを始める。モンスターが減るのはありがたいが、メッセージ欄が埋まるのがにくたらしい。が愛らしくてステキなものだなんて幻想も持ってないぞ。ただの比喩だ。かわいいって意味だよ」
「俺がかわいくたって意味ねえだろ」
「とっても意味があるぞ。僕が嬉しい」
「いいからさっさと経験値復活の薬経験値復活の薬その名の通り、経験値減少を治す薬。店で売っている。を買いに行くぜ」
「もったいない」
「冗談じゃあねえ」
渋る花京院を引きずるようにして、二人は寺院に足を運んだ。
ところが。
「経験値復活の薬?残念だが、今は品切れ品切れ店の品揃えは1日で変更される。欲しいものがなかったら、宿屋で時間を飛ばすのも手。だな」
「チッ」
「そっちの、もしかしていつも一緒にいるバルログのお兄さんかい?」
「………そうだ」
「それはそれは!いやあすっかり見違えたなあ」
承太郎は妖精の店主をジロリと睨んだ。
だが、かわいらしい顔でそうしたところで、たいしたダメージにはならなかったらしい。
「ま、明日なら入荷してるかもしれんな。してないかもしれんが。また来てくれよ」
「だってさ、承太郎。仕方ないからその姿でデートしないか?」
「デートぉ?」
承太郎は高い声を上げた。
花京院はくすくす笑って彼の手を取ると、町の中心の噴水噴水モリバントには噴水がある。だから何ってことはまったくないけど、私は好きです。のところまで引っ張っていった。
「いや、さっきの店にはなかったが、他の町の店にはあるかもしれないじゃあないか。それを探しつつ、武器屋とか、他のところにも行こうぜ。久しぶりの地上だ。休暇というやつだ」
「それは悪くないが、この姿でか……」
「だからいいんじゃあないか!」
「ご機嫌だな。てめーまさかショタコンか」
「まさか!」
花京院は大きく口を開けて笑った。
「小さな子どもになんて、一切興味ないよ。どちらかといえば嫌いなくらいだ。君だからに決まってるだろう、いつもカッコいい君の、かわいい姿が見れて楽しいんだよ。さあ、どこから行こうか?」


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