オークや巨人といった他のモンスターも撃破してから、二人は他の部屋へ足を踏み入れ、動かないミミックモンスターや鈍すぎて眠ったままだったモンスターを倒していった。 「……承太郎!」 「何がいる」 「あそこの棚の向こう。本がいくつか置いてあるんだが、中に一冊、ラアルの破壊集大成がいる」 「ほう」 「手を出すなよ。あいつとは別のやつだが、倒してやらないと気が済まない」 「まあ頑張れ」 花京院は自分と承太郎に耐性の魔法を張ると、岩石溶解の呪文を唱えて棚を溶かした。 回りこむなんていうのは、愚の骨頂である。 ”ラアルの”が直接見える場所に穴を開けたのではない。 ”ラアルの”からは、花京院の姿が見えないようなところである。 花京院はその隙間に向けて、広範囲にダメージの及ぶファイア・ボールの魔法を撃ち込んだ。 ”ラアルの”は自分を攻撃してくる相手に気付くことなく灰と化した。 承太郎はヒュウっと口笛を吹いた。 LOSトリックだ。 花京院は本当に優秀なメイジだ。 承太郎と花京院は、ミミックを倒してアイテムを拾いながら部屋を回った。 全ての部屋の奥にデスソードがおり、ウォー・ハンマーを落としたので、ザックの中がいっぱいいっぱいである。 「さっさと持ち帰って鑑定しようぜ」 「ああ、いい資金源になりそうだ」 二人は倉庫の前で鑑定の杖を使いまくった。 「これは上質上質エゴ(特殊な能力)はついていないが、修正値がついて少しだけ強い武器や防具。プラス分だけ高く売れる。。これも」 「売り物だな。この指輪もだな」 「これは(パターン)(パターン)エゴ武器のエゴで、嬉しいものの一つ。色々な耐性がついていて、ものによってはアーティファクトを上回るものすらある。(パターン)基本の能力に加えランダムな能力がついていることもあるが、それは上位の鑑定である*鑑定*をしないと分からない。だ。*鑑定*しよう」 「ん?」 「どうした、承太郎?」 「いや、このウォー・ハンマーなんだが。なんだか特別製のもののような気がするぜ」 「へえ、鑑定してみろよ」 「おう」 承太郎が鑑定の杖を振るう。 「……これは」 「一体何だったんだ?」 「………ウォー・ハンマー『ミュルニール』だ」 「『ミュルニール』ぅ!?」 花京院は素っ頓狂な声を上げた。 ウォー・ハンマー『ミュルニール』といえば、神話時代の伝説の武器である。 「それは……確かにモンスターどもから取り戻したくなるよな」 「道理で重いと思ったぜ」 『ミュルニール』は神の武器なだけあって、とても大きい。 「しかし承太郎、君、それ持つの似合うぞ」 「やめろ、どうせ返さなきゃいけねえブツだ」 「………持ち逃げしちゃおうか」 「……………悪くねえな」 「…………………」 「………………………」 二人は大いに悩んだが、これを図書館で*鑑定*した時に足がつくとの結論になり、城へ持っていくことにした。 役人はそれはそれは喜んだ。 「ああ!ありがたい!モンスターを一掃してくれるとは。あの蔵は劇場にするつもりだったんだ、助かった。例の武器は見つかったかね?」 「ああ、これだろう」 承太郎が『ミュルニール』を差し出すと、役人は笑顔を見せた。 「クエストの報酬なんだが、その武器でどうかな」 「これを?」 二人は驚いて役人の顔を見た。 「ああ。主人もそれで納得している。元々使える兵士はいなかったし、宝物庫がモンスターどもに占領されて、奪われてしまったものだからな。よかったら、これからの冒険に役立てて欲しい」 「それは……ありがとう!」 こうして二人は、アーティファクト、ウォー・ハンマー『ミュルニール』を手に入れたのだ。 『ミュルニール』を図書館に持って行くと、司書のマインドフレアは目を丸くした。 「よく見つけたな。うぬ、これはかの神トールが使っていたものに違いない。雷の力を帯びていて、打ち振るえば電撃が敵の体を焦がすだろう。それにもちろん、ジャイアントに対してスレイスレイ弱点攻撃みたいなもの。デーモンにスレイのついたアイテムはデーモンスレイヤーということになる。普通のスレイと効果絶大なスレイの2種類ある。がついている」 物知りのマインドフレアは、トール神についての逸話を色々と聞かせてくれた。 ウォー・ハンマーにしては珍しく、投げても手元に戻ってくるというのは、トールが使っていた頃からの特性らしい。 「腕力と器用に修正値がついているから、ダメージが期待できるぞ。重い武器だからな、命中精度が気になるなら両手持ちするといい」 「分かったぜ」 「ありがとう」 二人はマインドフレアに礼金を弾んだ。 「承太郎、早速装備してみろよ」 「おう。こうか?」 『ミュルニール』を構えた大きなバルログは、その邪悪さに反して、神々しくさえあった。 「……うん、すごくいいと思うな」 「なんだ、どうした。顔が赤いぞ」 「うるさいな!見とれてたんだよ!!」 >>戻る |