承太郎は机の上に例の瓶を置いて、それを眺めていた。 花京院が来ることは分かっていたのだろう、自分はベッドに座り、粗末な椅子を勧めてきた。 言われるままに腰掛けて、花京院もそれを見やった。 淡く光る瓶はとても美しく、素人目にも高級、いや特別製アイテムの雰囲気アイテムを持ち歩いていると、「並」「上質」「呪われている」「高級品」などの雰囲気が分かることがある。「特別製」はアーティファクト。察知しやすさは職業に依存する。のものであるのは明らかだった。 花京院はふと思いついて、瓶を手にして魔力を込めてみた。 すると瓶から、まるで水のようにふつふつと光が溢れだし、それは部屋全体を明るく照らした。 花京院はふうっと息を吐いて興奮を逃がそうとした。 「間違いない。これはガラドリエルの玻璃瓶ガラドリエルの玻璃瓶元ネタは指輪物語。ガラドリエルからフロド・バギンズに贈られたもの。ゲームでは光源アーティファクトの一つ。当然、油つぼのいらない永久光源で、発動させると部屋全体を照らすことができる。だ」 「ああ、とんでもないものを手に入れたな。エルフの奥方ガラドリエル指輪物語の登場人物。もっとも力あるエルフの一人。映画に出てきたすごく偉そうなエルフの女性。なお亡くなったわけではなく、中つ国(世界)から船出して行ってしまった。の遺品とは」 「これで冒険が更に楽になるぞ。最近僕ら、すごく調子いいんじゃあないか?」 「まったくだ」 そう、そんな伝説のアイテムを手に入れて、二人とも気分が高揚していたのだ。 顔を上げて目を合わせれば、相手の目は熱を持ってきらきら光っていた。 ……出来心だった。 承太郎はつい首を伸ばして、つい頭をかしげ、つい花京院の口に己のそれを重ねた。 花京院は弾かれたように立ち上がった。 目をいっぱいに開いて、唇を触っている。 もしかして、この感触は。 硬くて熱い、これは。 「……悪い、嫌だったか」 「いや…いやその……嫌っていうか…驚いて」 「嫌、では、なかったんだな?」 「………うん」 花京院は目を泳がせた。 それから意を決したように顔を上げる。 「あの!………承太郎」 「…何だ」 「僕、その、今……『そんな気分』だ」 「……奇遇だな、俺もだぜ」 花京院は困ったように笑った。 承太郎の方はニヤリと悪どく笑って、花京院の腕を引いた。 >>戻る |