鉄獄より愛をこめて 23F

”「非常に進んだ科学は魔術と見分けがつかない。」”

仲直りを果たした二人は、晴れ晴れした顔で博物館を訪れた。館長のテンメインは、その様子で何かを察したようだった。

「あなたが僕のためを思って誘ってくれているのは分かります。けれど僕は、一緒には行けません。僕の幸せは、僕が自分で決めます」
「……そうですか」
テンメインはそう言って、一度目を閉じた。次に開いた時には、彼は笑顔だった。
「分かりました。あなたたちはあなたたちのままでいてください。……お幸せに」

次の日にはもう、博物館の館長は変わっていた。きっと、エルフの仲間の元へ戻ったのだろう。その博物館を見ながら、承太郎はぼそりとこう言った。

「……正直に言うと」
「うん?」
「あいつ、お前にちょっと見かけが似てるだけの、食いもんにしか見えてなかったぜ」
「………正直に言うとね」
「おう」
「僕だって冒険者だから、ダンジョンで他の人間やエルフを見ても、『敵のモンスター』にしか見えてなかったんだ。だけど最近は」
「最近は?」
「『ご飯だ』って思うようになっちゃったんだよね」
「………そうか」
「……そうなんだ。いよいよもって後戻りできない感じだ。責任を取ってもらいたい」
「そいつァ……仕方ねえな」
承太郎は口の端を持ち上げた。花京院も笑い返した。

それから二人は、ダンジョン探索再開のために持ち物を整理した。一番の収穫はテレパシー能力のついた例の帽子だった。承太郎が自分の帽子を頭に被り、それより小さなスランドゥイル王の帽子を角に引っ掛けているのを見て、花京院は「帽子掛けみたいだな!」と笑った。

他に見つかったアーティファクトとしては『デーモンベーン』があったが、これは全く役に立たない武器なので、さっさと売ることにした。
エゴアイテムはそこそこ有用なものが出てきて、花京院は浮遊能力のついたブーツ、承太郎は隠密ステータスにボーナスのついたクロークをそれぞれ身にまとった。
「そのブーツで浮けるのか?」
「ああ。あんまり目立たないけど、今でもちょっと浮いてる。水の上もこれで歩けるようになるぞ」
「それにしちゃ見下ろす高さが変わんねーな」
「だから、うっすらとしか浮いてないだって……あっこらやめろ、潰すな! 縮む!」
「おー縮め縮め」
「くそう」
倉庫の前でいちゃつく二人を、町の人々はいっそ微笑ましい気持ちで見ていた。